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バンドウイルカの紹介
平成18年11月10日
フリスビーキャッチ
名古屋港水族館のイルカのパフォーマンスでは、トレーナーが空中に投げたフリスビー※1をイルカにキャッチさせる種目を紹介しています。パフォーマンスでは簡単そうに見える「フリスビー キャッチ」ですが、水の中から跳び出してフリスビーをキャッチするには、いくつかの問題があります。

フリスビー動画


水と空気のように、密度の異なる物質を光が透過する場合、光はその境界で曲がってしまう性質があります。この性質は「屈折」と呼ばれています。

この屈折のせいで、水中から空気中の物体(フリスビー)を見上げた時、見かけの位置と実際の位置がずれて見えることがあります(図 1)。


さらに、この屈折が原因で、ある一定の角度(水中から空気中へは約49度)で入射すると、光は水面で反射してしまう性質があります。このため、水中から空が見える部分と見えない部分ができます。この水中から空が見える範囲は「スネルの窓」と呼ばれています(図 2)。

では、「フリスビーキャッチ」の時、イルカはこれらの現象にどう対応しているのでしょうか?

まず、フリスビーが実際の位置とずれて見える現象ですが、イルカはフリスビーの真下を泳ぐことで対応しているようです。フリスビーを真下から見上げた時、見かけの位置と実際の位置がずれて見えることはありません ※2

また、「スネルの窓」は深く潜れば潜るほど広くなることが知られています。フリスビーをキャッチする前に、イルカは水中をかなり深く潜っていくことが観察されています(図 3)。深く潜っていくことにより、空中の広い範囲をカバーすることができるため、フリスビーを発見しやすくなるのです。

実際に「フリスビーキャッチ」では、イルカは次のような挙動を見せます。トレーナーがサインを出した後、フリスビーを投げるとイルカはプールの底まで泳いでいき、水面を見上げます。この時、「スネルの窓」を通して、フリスビーがイルカの視野の中に「飛び込んで」来るように見えるのです。さらにイルカは先ほどの屈折の現象に対応するために、フリスビーの位置を確認するように、その真下を浮上しながら追いかけていきます。この時、イルカは背面で泳いでいます。これはイルカの視野が腹側の方に広いためのようです。

空中に跳び出る瞬間にイルカは体をひねり、腹側を下にします。そうして空中にあるフリスビーを無事にキャッチするのです。


実は、この「フリスビーキャッチ」と同様に、野生のバンドウイルカの仲間が、自然界で飛んでいる「トビウオ 」※3を空中で捕まえる「狩り」が観察されています ※4(図 4)。この時も「フリスビーキャッチ」と同様に、飛んでいるトビウオの真下を背面で遊泳しながら追尾しているようです。

※1
フライングディスク;「フリスビー」は米ワムオー社の登録商標です。

※2
空気の屈折率 n1
水の屈折率  n2
空気中から水中への光の入射角 i
水中に入った光の屈折角 r とすると

n1 sini=n2 sinr (スネルの法則)

イルカがフリスビーを水中から真上に見た時、入射角( i )は0°(0度)になります。
sin0゜=0なので、代入すると

n1×0(ゼロ)=n2×sinr
∴ sinr=0(ゼロ)

0°≦r≦90°なので、r=0° となり、この場合、フリスビーの見かけの位置は屈折の影響を受けないことになります。

※3
ここで言う「トビウオ」とはダツ目トビウオ科に属する魚類の総称です。「トビウオ」の仲間は全世界で50種ほど、国内では29種知られていますが、胸びれや腹びれを大きく広げ、海面を滑空することで有名な海水魚です。

※4
伊豆諸島にある御蔵島(みくらじま)の周辺には、バンドウイルカと近縁のミナミバンドウイルカが生息しています。このイルカが飛んで逃げる「トビウオ」を空中で捕まえるところが観察されています(『御蔵島のイルカ』 ジャック T. モイヤー著 天野雅男・天野あづさ共訳 海游舎)。

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